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第14回
・ゴジラS.Pと特撮の未来を考える
・帰ってきたウルトラマン登場

2021-08-18

タイトル「帰ってきたウルトラマン登場」

東風力研究所だより(その14)

■「ゴジラ キング・オブ・モンスターズを観終えて

 今、録画していたレジェンダリーの「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を観終わったところだ。
 感想をお聞かせください。
 一所懸命、作品を作っている人達に敬意を払って悪口は言わない主義だ。ただ、ありゃ「ライオンキング」のゴジラ版だな。
 ??
 怪獣たちが最後に王のゴジラにひれ伏していたではないか。それに、ゴジラの顔も何だか角張っていて、大西ライオンの被りものにちょっと似ていたぞ。次回作では、ゴジラ(ムファサ)の弟(スカー)の裏切りでゴジラは死ぬ。怪獣王国を追放された息子のミニラ(シンバ)が修行の末、スカーを打ち破り新しい王になる話、「叔父ゴジラvsミニラ」だな。
 次回作は封切り間近の「ゴジラvsコング」と決まってます!

「はじめ人間ギャートルズ」マンモーとドテチン
はじめ人間ギャートルズ」(TV録画より)
マンモーとドテチン(右端)

 「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」では、他にもモスラ(成虫)の脚がカマキリのようで気持ち悪かった。ザ・ピーナッツもびっくりだ。それから、巨大マンモスって怪獣なのか?わが国では大きなマンモスのことをマンモーと呼ぶが、マンモーのそばにはドテチンがいるはずだ。
 結局、悪口ばっかり言ってるじゃないですか。
 いや、芹沢博士渡辺謙)が死んでゴジラに喝を入れるところは良かった。誰かが、わが身を犠牲にして怪獣に立ち向かうのは、ゴジラ映画のお約束だからな。

■「ゴジラS.P」と特撮の未来を考える

 ゴジラと言えば、アニメ「ゴジラ S.P(シンギュラポイント)」が放映中ですが・・・
 最初はアニメと聞いて馬鹿にしておったんだが、見始めると面白くて引き込まれた。初老の身にはちょっと難解なストーリーではあるが。
 教授が褒めるとは珍しい。
 最初にゴジラのアニメ化と聞いて、「ザ・ウルトラマン」のことを思い出した。タツノコプロ出身のスタッフによるアニメは当初、相当クオリティが高かったが、それでも怪獣や戦闘シーンの表現は実写と比べて物足りなく感じた。しかし「ゴジラS.P」では怪獣をCGで表現し、実写に匹敵する迫力映像を生み出している。しかも、アニメとCGが、極端に言うと見分けがつかないほどうまく融合している。このスタイルは、今後衰退していくであろう特撮を考えたときに「あり」と思った。
 というのは?
 特撮とは、現実の世界と虚構の世界とを繋ぐ「手段」に過ぎないのだが、特撮部分が如何にリアルに仕上がっているかが作品を観る上での関心事であったし、何より特撮にはそれに携わっている人の顔が見えた。レイ・ハリーハウゼン円谷英二ダグラス・トランブルジョン・ダイクストラ高野宏一川北紘一等々。要するにその「手段」を楽しむため、特撮作品は存在していたといっても過言ではない。しかしCG技術はもはや「手段」という域を超え、何が現実で何が虚構の世界なのかの区別すら曖昧にしてしまった。しかも性能のよいパソコンひとつあれば、素人でも映画並みの映像が製作できる時代だ。特撮監督の名前にわくわくし、特撮部分の出来・不出来を語るという私たちの楽しみはすっかり奪われてしまった。それだけではないぞ。

「アルゴ探検隊の大冒険」
アルゴ探検隊の大冒険」(1963年公開、TV録画より)
レイ・ハリーハウゼンのストップ・モーションアニメによる驚異の特撮シーン。
CGなら骸骨剣士の動きはもっとリアルだったかもしれないが、この映画をここまで有名にしなかっただろう。

 他に何か?
 最近ではCGが本編部分にも多用されているが、どこまでが現実なのか分からない世界って観ていて面白いか?過去に特撮番組の爆発シーンで、髪の毛に火が付いてしまった女優さんが降板するようなことがあった。昔の作品では役者さんが体を張るシーンも多かったし、本編にも少なからず今より緊張感があった。でも炎が作り物なのはまだしも、焼かれる人間までCGで表現されてしまうと、どこで私たちは炎の熱さを感じたらいいんだ?近代特撮作品においては、こうした本編部分のCGに頼ったお手軽さというか、薄っぺらさも問題だと思う。
 で、「ゴジラS.P」の話とどう繋がるのですか?
 遅かれ早かれ、登場する人間全てをCGで描くフルCGの作品が増えてくることは間違いない。わが国ではNHKのAI美空ひばりが物議を醸したが、スターウォーズのスピンオフ作品ではすでに死んでいるピーター・カッシング(ターキン総督)がCGで復活しているそうだしな。フルCGが映像の世界を席巻するようになると、虚構の世界で丸々1本の作品を作り上げてしまう訳だから、現実世界との懸け橋は不要になり特撮というジャンルは消失する。残るのは、1)完全実写、2)実写(パートCG)、3)フルCG、4)フルアニメ、5)アニメ(パートCG)注)と言うことになるのだが、作品としてバラエティに富み、映像にクリエーターの個性が色濃く反映されるのは、CGより断然アニメだろう。わが国では、豊かな才能を感じるアニメーターが多く育ってきているしな。だから、従来の特撮作品の実写部分をアニメに置きかえた、5)の様なハイブリッド作品が今後は有望だと思った次第だ。
注)実写(パートアニメ)は、わが国でも実験的に試されたことがあるが(「プロレスの星 アステカイザー」等)、大きな成果は得られていない。一方、実写背景にアニメを埋め込む(あるいはアニメ背景に実写を埋め込む)といった映像処理は古くはディズニー映画に見られるが、今後はCGのジャンルに位置づけられると考える。
 教授は、CGで怪獣を表現する近年のゴジラ映画には辛口コメントですね。
 実写映画におけるCGは、どう考えても怪獣にむいてないと思うぞ。「ジュラシック・パーク」が感動を生んだのは、実際に存在していた恐竜をCGで再現したからであって、いくらゴジラをCGでそれっぽく表現しても、「本物のゴジラってこうなんだ」って感動する観客はいない。むしろスーツアクターの演じるゴジラの方がよっぽど生物らしいし。
 同じCGを駆使していても、映画「マトリックス」や「バイオ・ハザード」シリーズは好きですよね。
 「バイオハザード」に関してはジョヴォ様(ミラ・ジョヴォヴィッチ)ファンと言うのも大きいが、この2作品はCGをうまく使っているし、本編をCGが食っていない。「マトリックス」については柿沼秀樹氏が興味深い発言をしているので以下で紹介する。
 「マトリックス」の3作目でデルカネザル(ママ、正しくはネブカドネザル。ただし当該シーンはハンマー号)の大半の飛行シーンがCGなんですが、唯一、迫力があるなぁ、と思ったシーンが、ザイオンの鉄の扉をぶち破って突入してくるシーンなんです。そこだけは唯一リピートして観ましたが、そこは大スケールのミニチュアワークなんですよ。衝突の衝撃でミニチュアがぶるぶると振動している。プロップ撮影の際の偶然性というのも当然あるんだけれど、CGでは実際に行った時に起こりうる現象のすべてが、余すところなく再現されてなんかいないんですよ。現在のCGでは、材質とかその対象の構造物のフレーム、破砕する際の特性、モノに衝突した時の強度、震動、二次的、三次的に起こるかもしれない予測不可能なアクシデント、などなどがほとんど織り込まれていない。モノが飛んでる時って、実際にプロップを投げた時には重力や風の抵抗などすべての要素が相まって飛び、落ちるわけですけど、CGはテクスチャーを貼られた影がただ画面を横切っているだけです。しかし、だからといって完全なシミュレーションを持ち込むと今度は説明的過ぎてしまう・・・
CharacterAGE VOL.02」(学習研究社):「空想科学模型対談 遠藤秀紀×柿沼秀樹」より

 「バイオハザード」でも2作目で、ミサイルによるビルの破壊シーンに精巧なビルの模型が使われている。何と、模型製作に4ヶ月も要したそうだ。両作品に共通するのは、例え数秒のシーンであっても手を抜かないという特撮スタッフの情熱と信念だな。こういう連中はCGを万能と考えていないから、CG主体の特撮であっても良い画が作れるんだと思う。
 わが国の特撮の現状はどうでしょうか?
 新しい「ウルトラマン」シリーズでもCGはそれなりに使われているが、特撮シーンでは実験的な取組みも多く、スタッフのやる気が感じられる。とにかく、ウルトラマンはヒューマノイドの代表格な訳だから、CGでなくても着ぐるみで十分と思うがな・・・そう言えば、前回、「X・ボンバー」について軽く触れたが、あれなど手のかかる特撮作品の良い例だよな。CG全盛の現代では、スーパーマリオネーション(「X・ボンバー」ではスーパーマリオラマと称している)は製作されることがないと思うと、ついDVDを衝動買いしてしまった。現に「サンダーバード」のリメイクである「サンダーバード ARE GO」では、マリオネットがCGに置き換わっていたしな。「X・ボンバー」の特撮は吊りによる操演主体だが、ゲルマ母艦の描写に迫力があると思っていたら、全長4mもある巨大模型を使って撮影していたそうだ。なお、私が本放送当時に録画したタカトクトイスのCM動画をおまけでUPしているので御覧下さい。
 本当に変なものばかりコレクションしていますね。

タカトクトイスのCM(TV録画)

祝!帰ってきたウルトラマン放送50周年 勝手に記念 ソフビ電動化計画
No.14 帰ってきたウルトラマン)

ソフビ電動化計画「帰ってきたウルトラマン」
2010年完成

 次回からこのコーナーは少しお休みをいただくので、今回は主人公であるウルトラマンを紹介します。以前、ビルガモの電動化が第一号と述べましたが、そうなると当然、対戦相手としてのウルトラマンが欲しくなり製作しました。使用ソフビは、怪獣郷と同じブランドの銀河連邦シリーズのものです。
 ウルトラマンの電動化にあたり、目が光り、カラータイマーが青発光、赤点滅するマルサンのプラモデルに負けるわけにはいきません。当初は、マルサンと同じ麦球でこれらのライティングを行っていましたが、特に目の発光においてウルトラマンの特徴である白色光を表現できません。従って、電源は当初の単五電池からCR2に変更し、LEDを使用することにしました(第5回参照)。その結果、電池を体内に収納できなくなり、体外の足元に電池BOXを設置せざるを得なくなりましたが、むき出しの電池BOXごと歩行するという変則スタイルになりました。
 ライティングで問題になるのがクリアパーツです。目とカラータイマーのクリアパーツを自作しても良かったのですが、これが中々面倒です。半割のソフビボディの内側に紙粘土を詰め硬化したものをオス型とし、それに熱した透明プラ版を押し付け成形後、切り取るのが良いと思っていますが、腕に覚えのある方なら他に良い方法をご存じかと思います。私にはそのようなスキルがないので、全身が透明なソフビ(地球初登場バージョン)を使用し、目とカラータイマー以外を逆に塗装するという荒業を行いました。ウルトラマンは赤色の二重線の塗装が大変です。私は塗装の腕が悪いので、写真の様な仕上がりになってしまいました。銀河連邦シリーズの「SP版」は塗装のクオリティが高いので、何れ自作したクリアパーツを埋め込みリベンジしたいと思います。また、今回のようにピンポイントで発光させる場合、光漏れが気になることがありますが、発光部以外は内側を黒色で塗りつぶすことが効果的ですので、同様の事例があればお試し下さい。なお、今回の歩行システムは、足裏から疑似足が出入りする、いわゆるイマイ式を採用しています。

ソフビ電動化計画「帰ってきたウルトラマン」

:銀河連邦ソフビ 「帰ってきたウルトラマン地球初登場バージョン」:目の塗装は、シンナーで除去
タミヤの楽しい工作シリーズ「ミニモーター多段ギヤボックス」を仕込んだところ
:完成(麦球による発光状況)

:完成後右側面
:同正面(カラータイマー赤点滅状態)
:同左側面

:完成後背面:足元はCR2電池BOX
:銀河連邦SP版ソフビ
:マルサンプラモ復刻「ウルトラマン」(ノスタルジック・ヒーローズ製)