第16回
・「ルパン三世」の半世紀
・敵役、再び
・無動力Toyを動かす(第2回)

目次/Table of contents
東風力研究所だより(その16)
■「ルパン三世」50周年
アニメ化50周年を記念して、10月から「ルパン三世」の新作アニメが始まるようです。
もう「Part6」か。個人的には「Part4」も「Part5」も面白かったので、ファンとしては期待しているが、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」然りで、ちょっと過去の人気や名前に依存しすぎでないか?最近のTV局は、新しい番組、キャラクターを創造し、育てようという意欲に欠けている。ほとんどの新番組は1クールどころか10回程度で終了するが、視聴率が良いと嫌になるくらい何年も続けるしな。素人が撮影した動画の寄せ集め番組も目に付くし、作家たちのクリエイティブ精神はどこ行った?って感じだ。
冒頭から手厳しいですね・・・
「ルパン三世」に話を戻すと、我々の世代では圧倒的に第1シリーズ(1971年10月~1972年3月)が支持されている。これは演出した大隅正秋(現おおすみ正秋)氏の力量によるところが大きい。前半の数話で降板した大隅氏の後を受けて、高畑勲氏と宮崎駿氏が演出を引き継いだのだが、以後は皆が知っている現在のルパンである。「大隅ルパン」(が存在してはいけないと本人は言うが 注1))とは別ものだ。宮崎氏は、「昔のルパンは人殺しをしなかった」旨の発言をしていたと思うが、ルパンはそもそもシンジケートのボスだったし、序盤は結構な数の敵を殺していた。
登場するキャラクターも第1シリーズは個性的でしたね。
大隅氏は演出にあたり、「原作の世界に浸りきった処から、もう一度、新しく自分を出していこうという作業が大切じゃないかと思った」と述べている 注2)。私は、魔術師パイカルの登場する第2話が特に気に入っているが、大人向きである原作のテイストを損なうことなく、子供が見ても面白いと思う作品に仕上げる技量は並大抵のものではないと思う。それはルパンに限らず、氏の演出による「ムーミン」でも実証済みだが、原作よりはるかに面白いのが気に入らなかったのか、原作者のクレームによりお蔵入りとなってしまったのが本当に残念である。
注1)、2)とも:「100てんランド・アニメコレクション⑥ルパン三世2」(双葉社)大隅正秋氏インタビューより
映像出典:「LUPIN THE 3RD: COMPLETE ORIGINAL SERIES」(販売元:Eastern Star)より
※不死身の殺し屋パイカルとの戦いは、ルパンと次元に緊張感が全くないので、かえってスリリングな印象を与える。
「ルパン三世」と言えば、宮崎駿さんの世界とばかり思ってました。
もちろん、作画の大塚康生氏とともに、宮崎氏の果たした功績は大きい。特に、第2シリーズ(1977年10月~1980年10月)が第1シリーズのファンからすると全くの期待外れで、本当のルパンを渇望するファンの「飢え」を満たしたのが、宮崎氏が演出した映画「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年12月公開)であり、第2シリーズの第145話「死の翼アルバトロス」(1980年7月)と最終話「さらば愛しきルパンよ」(同10月)という訳だ。もちろん、映画は初公開時に映画館で観て大興奮したし、第2シリーズの2本は録画したテープが擦り切れるまで繰り返し観たりもした。
それでも第1シリーズが心に残っている、という訳は?
繰り返しになるが、第1シリーズの序盤とそれ以降、現在に至るまでは、全く別の作品なんだよ。子供の時、最初に観たのがアダルト向きの方だったから、刷り込まれてしまったのかもしれない。とにかく、大隅氏、宮崎氏といったレジェンドたちに感謝しつつも、どうせやるなら昔の作品を超越した、面白い作品にしていってもらいたい。
映像出典:「LUPIN THE 3RD: COMPLETE ORIGINAL SERIES」(販売元:Eastern Star)より
※当初は石川五ヱ門も敵だった。(左上)「な~に、殺しゃしねえ。見栄っ張りの剣豪坊やに、ちょいとお灸をすえてやろうって訳さ」 ルパンは五ヱ門にちょっかいを出し、この後、文字通り大やけどをする。
■再度、敵役の話
パイカル、五ヱ門といった強烈なキャラの取上げついでに、個人的に気に入っている敵役の紹介を行いたいと思う。
第9回の記事で、ボーグとバルタン星人について語ってましたが、その続きでですね。
「北斗の拳」のラオウ、「幽☆遊☆白書」の戸愚呂(弟)、「機動戦士ガンダム」のシャアなど、最強と思う敵役は個人個人で異なるだろうが、私の場合は以下のとおりだ。
1)ボーグ:「新スタートレック:STAR TREK THE NEXT GENERATION」第42、74、75、123、152、153話(1987~1994年)

ボーグ・キューブと呼ばれる立方体の巨大宇宙船で宇宙を高速移動し、遭遇した高度な文明は全て吸収し同化するという謎の生命体の一群。圧倒的科学力を有しており、惑星連邦の艦隊では歯が立たない。ピカード艦長を拉致しサイボーグに改造するが、艦長を奪還された後は弱点を惑星連邦に攻撃されるようになり、形勢が逆転する。 キューブ1基で艦隊を全滅させ、ドローンと呼ばれる有機体と機械の複合生命体もフェイザー銃による攻撃が1回しか効かないなど、普通に戦ったらどうやっても勝てないという設定がすばらしい。宇宙人との圧倒的戦力差や主人公が一度は敵の手先になるといったあたりは、「キャプテン・スカーレット」の影響があるのでしょうか?(という私は、実は「キャプテン・スカーレット」を観たことがないのです。間違っていたらすいません)
2)マーチン:「バオー来訪者」(荒木飛呂彦)(1984年)


生物兵器「バオー」を追う秘密組織「ドレス」の霞の目博士がマンドリルを改良、殺し屋の軍人が戦闘用に訓練したもの。体毛や胃の中に殺戮道具を隠し持っている。バオーをあと一歩のところまで追いつめるが、必殺技「リスキニ・ハーデン・セイバー」で脳天を割られ死亡。 マンガの単行本はほとんど持たない主義だが、「バオー来訪者」だけは別で、「少年ジャンプ」連載時から注目していた。「ジョジョの奇妙な冒険」は全く読んでいないのだが、才能豊かな漫画家だと思う。とにかく、バオーの必殺技が、「バオー・メルテッディン・パルム・フェノメノン」とか「バオー・ブレイク・ダークサンダー・フェノメノン」とか叫び甲斐があってよいのだ。
3)刺客:「サムライ・チャンプルー」(2004年)
素浪人 犬山:第2話「百鬼夜行」
盲目の女旅芸人 沙羅:第20話「悲歌慷慨 其之壱」、第21話「悲歌慷慨 其之弐」
映像出典:「Samurai Champloo: The Complete Series」(販売元 : Funimation Prod)より
映像出典:「Samurai Champloo: The Complete Series」(販売元 : Funimation Prod)より
「サムライ・チャンプルー」には公儀の放った刺客が次々現れるが、これが滅茶苦茶に強い連中ばかりで、ジンは冴えない素浪人に思えた犬山に歯が立たず、盲目の沙羅にはムゲンともに殺されかける。時代劇は、主人公が格上の剣豪と戦うストーリーが断然面白く、木村拓哉主演の映画(2006年)で話題になった藤沢周平の「武士の一分」などが良い例である。 どうやっても敵わない相手に挑むという意味では、アーノルド・シュワルツェネッガーが宇宙人と素手で戦った「プレデター」(1987年)や、サタンと戦った「エンド・オブ・デイズ」(1999年)なども該当するかと思います。シュワちゃんは、もはやゴジラやキングコング以外に戦う相手がなく、俳優を引退してしまったのかもしれません。
4)ガミラス:「宇宙戦艦ヤマト」(1974~1975年)
映像出典:「TVシリーズ 宇宙戦艦ヤマト DVDメモリアルボックス」(発売・販売元 バンダイビジュアル㈱)より
あまりにも有名な敵役で取り上げるのもどうかと思ったが、第1話で圧倒的に強力な謎の宇宙艦隊とされていた辺りまでは本当に面白かった。女性のスキャットが流れる中、遊星爆弾が地球に投下されていく映像を覚えている方も多いことだろう。 「時に西暦2199年、地球は今、最期の時を迎えようとしていた。21世紀のはじめ以来、宇宙侵略を着々と進めてきた謎の宇宙艦隊はついに太陽系へその魔の手を伸ばし、地球に対して遊星爆弾による無差別攻撃を加え続けているのだ・・・」第1話のCM明けに流れるナレーションはぐっと来る。しかし、ガミラス帝国の正体が明らかになるにつれて、敵方の人間臭いエピソードも次第に増えてくる。その結果、古代進がガミラス帝国を滅ぼした後、「愛し合うべきだった」などと後悔してしまうのだ。壮大なスペースオペラに人間ドラマを乗っけすぎると、物語のスケールが小さく感じられてしまうので嫌なのだが、「ヤマト」の場合はそれで人気が出た一面もあり仕方ない。
5)ゼットン:「ウルトラマン」シリーズ(1966年~)

右:二代目ゼットン 「帰ってきたウルトラマンアルバム」(朝日ソノラマ)より転載
バルタン星人がウルトラマンの敵役とか言ってませんでしたっけ?
当ブログが扱う70年代に限ると、二代目ゼットンの風貌があまりにお粗末なので好敵手として推せなかったのだが、「ウルトラマンマックス」からの着ぐるみと戦績は素晴らしいものがあり、シリーズ全体ではゼットンが一番だろう。
久々にゼットンが登場した第13話は、これまた久しぶりにウルトラシリーズに帰ってきた上原正三さんの脚本だったんですね。
うん、個人的には「マックス」が最後の「良質な」ウルトラシリーズと考えている。2,13,15、22、24話など、傑作も多いしな。会社に変な資本が入ってくると、身銭を切ってでも良い商品を提供しようとは考えなくなるが、映像の世界でも事情は同じという訳だ。
今日は最後まで手厳しかったですね。
※傑作。今の円谷プロにこれを超える作品を生み出すパワーはあるだろうか。
無動力Toyを動かす(第2回)マルサン・ブルマァク編(その2)
「無動力Toyを動かす」2回目の今回は、マルサン・ブルマァク編(その2)として、前回紹介したノスタルジック・ヒーローズ以外のメーカーによる復刻品を改造し歩くようにした作例を紹介します。
■旧マルサン・ブルマァク製品の無動力Toyを動かす(その2:その他メーカー復刻版編)
1)マルサンプラモ「大魔神」復刻ソフビ(M1号製)

マルサンの造形はプラモデルとは思えないほど精巧で、大変人気がある商品ですが、比較的目にする機会の多いプラモデルです。ただし、完全に未組立になると法外な価格がつくのは間違いありません。「Aucfree」による調査では、過去5年間にオリジナルで未組立品の出品はありませんでした。ほかに、組立て中のものが1件で落札価格25万円、組立て済みのものが1件で落札価格10.6万円、レプリカ品が1件で落札価格32,000円となっています。
郡山のメーカー「M1号」が、1997年に「復刻シリーズNO.3」として、箱や解説書ごとソフビで復刻しました。価格は恐らく6,500円だと思います。ソフビ入手の経緯は忘れましたが、2005年に定価に近い価格で購入したと思います。
非常に肉厚のソフビだったので、駆動部を設置するために一日中、ルーターで内部を削りました。あの重厚感がある足音を再現したくて、初期タイプにはボタン電池で作動するボイスレコーダーを顔の近くに収納し、耳元のスイッチで起動するようにしていました。リモコンもソフビですが、こちらも肉厚のためオリジナルと同じ単一電池は収納しきれず、単二仕様に変更しています。
大魔神は、私がソフビを電動化した第1号の作品です。歩行性能は極めて悪いのですが、何せ造形が素晴らしいソフビですので、眺めて楽しめればよいかと思っています。

左:初期タイプの内部。喉元はボイスレコーダー、中:現在の内部、右:同足裏
左:完成後の右側面、中:同背面、右:同左側面
2)ブルマァクプラモ「キングジョー」復刻ガレージキット(ALEX製)

マルサン(マルザン)倒産後、マルサンの社員たちが立ち上げたブルマァクは第2次怪獣ブームに乗って急成長します。ブルマァクも怪獣のプラモデルを多く発売しましたが、マルサンよりスケールが一回り小さく、ゼンマイ動力のものが中心になりました。これらのプラモデルは、後にバンダイから数点が再販されますが、「キングジョー」、「エレキング」、「バルタン星人」、「デットン」の4点は再販されなかったため、現在、かなり高値で取引されています。
「Aucfree」による調査では、「キングジョー」は過去5年間に未組立品の出品が4件あり、平均落札価格は約11万円でした。ほかに組立て済みの出品が2件あり平均落札価格は51,500円、空箱の出品が1件あり落札価格は7,250円でした。詳しいことは分かりませんが、「ALEX」というメーカーがガレージキットとして復刻していたものを、2009年に1万円ほどで入手しました。オリジナルのプラモデルから雌型のみを取り製作したと思われる大変肉厚なキットのため、ルーターで内側の表面を削り取る作業は「大魔神」よりさらに過酷なものでした。動力は、日東の再販プラモデル「ジグラ」のゼンマイが何とか内部に納まりましたが、オリジナル品よりボディが相当重くなっているので、ゼンマイのパワーが若干、不足気味です。足裏の逆回転防止ローラーについては、3)の「エビラ」で初めて採用した、網戸の押さえゴムを使っています。どこにでも売っている廉価な商品ですので、一度、お試し下さい。
なお、写真を見て気付かれた方がいるかもしれませんが、腰にある4つの突起にあるマークの方向は「ー」でなく「┃」が正解です。しかし、ブルマァクの説明書通り、あえて「ー」の向きで組み立てました。

左:ALEX製キットの外箱、中:オリジナルの組立説明書(コピー)、右:箱内部

左:「ジグラ」のゼンマイを取り付けた状態、中:両脚の回転軸受けがぎりぎり納まっている状況、右:足裏の逆回転防止ローラー。網戸の押さえゴム+タミヤのプッシュリベットで構成

左:動力部の設置状況、中左:パーツ合わせ完了後前面(頭頂部のシャフトが1本折れていたため、プッシュリベットで代用)、中右:同右側面、右:同背面
3)マルサンプラモ「エビラ」復刻ミニプラモデル(バンプレスト製)

マルサンの電動プラモデル「エビラ」は、中古プラモ市場ではまさにモンスターと言える存在で、未組立の完品ともなるとショップでの売値は新車1台分くらいになると思われます。まさに狂った世界ですが、以前、「開運!なんでも鑑定団」である鑑定士が語っていたように、このお宝はベンツと同じ値段だが、ベンツと違うのは世界に数個しかなく、しかも欲しいっていう人間が何人もいるんだ、ということなんでしょう。
「Aucfree」による調査では、過去5年間にオリジナル品の出品はありませんでした。複製キャストは8件出品されており、オーロラファンクラブ製と思しきものが4件で組済み含む平均落札価格は約35,000円、出所不明のものが4件で組済み含む平均落札価格は約30,000円でした。また、精密なレプリカ品が1件出品されており落札価格は16万円でした。
写真はバンプレスト製のミニプラモデルコレクション「エビラ」を改造したものです。2004年~2005年に550円で販売されました。元々はゲームの景品用に開発されたのかもしれません。オリジナルを3Dスキャンして製造したと思われますが、モールドがもうちょっと細やかだったら、逆に拡大してオリジナルの復元ができたのにと思います。また、オリジナルの1/3のスケールですが、せめて1/2にして欲しかったというのが本音です。
電動化ですが、タミヤの楽しい工作シリーズなど既存のギヤボックスはボディに収納できないので、ギヤを自作しミニモーターとともに体内に押し込みました。逆回転防止ローラーは写真を見れば分かると思いますが、網戸の押さえゴムの細いサイズを使用しています。また、付属の小さいリモコンに納まる電池などありませんから、単三電池ボックスに取り付け、スイッチを活かしプッシュすると通電するようにしています。
ギヤでの低速化には限界があり、完成品はオリジナルと(多分)違って非常にせわしなく動きますが、総製作費3千円程度で1/3スケールのエビラを入手することができたと思うと満足です。また、アオシマのプラモデル「寿司一丁:えび」と同スケールで、「寿司一丁」はプルバックゼンマイで走るので、エビラと対決させると面白いと思います。

