第25回
・タイムトラベルについて語る
・スモーキング・トイ
・プラスチック怪獣ゴキネズラ登場

東風力研究所だより(その25)
■タイムトラベルについて語る
タイムマシンはすでに存在している。
何ですか、唐突に。でも本当なら子供の頃に戻って、絶版プラモデルをどっさり持ち帰り、ショップで売りさばいて大儲けしたいですね。
太陽剣、オーロラプラズマ返し!
オーロラプラズマ返し!
オーロラプラズマ返し!
ドカーン!
残念ながらその時代へ戻れる可能性は低い。タイムマシンは理論上は成立し、これまで幾つかのモデルが提案されている。有名なのは物理学者のフランク・ティプラーが提案した「ティプラーの円筒」だ。密度が非常に高くて無限の長さを持つ円筒を造り、その表面を光速の半分以上の速さで回転させれば完成だ。あとは円筒の表面近くを頑丈なロケットで螺旋状に回りながら上昇、あるいは下降すれば、ロケットは任意の未来や過去に行くことができる。これは絵空事でも何でもなくて、アインシュタイン方程式から導き出される真実だ。
じゃあ、1970年代にも戻れるのでは?
そのためには1970年代に「ティプラーの円筒」が存在していなければならない。「ティプラーの円筒」はタイムマシンであることに間違いはないが、ドラえもんのタイムマシンの様にマシンごとタイムトラベルはできないのだ。要は、ロケットをある時代へ送り込む発射装置かつ受取装置に過ぎない。だから、先の説明で「ロケットは」と強調しておいたのだ。
ということは、戻りたい年代には人類が「ティプラーの円筒」をすでに完成させている必要がありますが、そんな話はこれまで聞いたことがないので、私たちは1秒たりとも過去へ戻れないということになりますね。
お主も、だいぶ頭が良くなってきたな。もっとも、宇宙人が過去にどこかで「ティプラーの円筒」を完成させていれば話は別だ。それが江戸時代に完成していたのなら江戸時代までは戻れるし、白亜紀に完成していたのなら恐竜に会うことだってできる。
「ティプラーの円筒」を造るには、どのくらいの技術力が必要なんですか?
長さ100km、半径10kmで太陽と同じ質量を持つ円筒が1秒間に2,000回転すれば、「ティプラーの円筒」の基準に達するという研究報告がある。既存の技術でこれを達成するのは相当ハードルが高いが、中性子星なんかは半径が10km程度で概ね太陽と同じ質量を有するとされているし、その中性子星が高速回転しているパルサーと呼ばれる天体は、1秒間に700回転しているものまでは観測されている。このように、自然界に存在する天体を制御できるようになれば、必ずしも実現不可能という訳ではないだろう。
先にタイムマシンが存在していると言ったのは、嘘ですか?
いや、過去へ戻るのは困難だが、未来へ行くのは簡単なんだ。アインシュタイン方程式によると、移動する物体が光速に近づくにつれ、時間がゆっくり進むというのは聞いたことがあるだろう。
ウラシマ効果ってやつですね。双子の一方が光速に近い速度のロケットで地球を出発し、何年か宇宙旅行をして戻ってきたらもう一方が老人になっているという・・・
光速の99.9%で進む物体は時間の進行が通常の4.5%にまで低下するため、その速さのロケットに1年間乗っているだけで22年後の未来へ行ける。光速の99.999%まで頑張れば、224年後だ。ただし、時間の進行度の逆数分、見かけの質量が増加することもアインシュタイン方程式は示唆しており、先の例では光速の99.9%で22倍、99.999%で224倍になる。光速の100%だと見かけの質量は∞(無限大)にまで増加してしまうので、これが質量を持つ物体が光速を超えることができない根拠となっている。
未来へ行くタイムマシンも難しそうですね。
ちょっとした未来へ行くタイムマシンはすでに存在する。人生80年間、毎日12時間飛行機に乗ってみよ。私の試算では、平均時速500kmの飛行機に乗り続けると、死ぬまでに飛行機に全く乗らない人より0.0001秒ほど未来へ行ける(事故で死なない限り)。また、時速28,000kmで地球を周回している宇宙ステーションに1年間滞在していると、地上の人々より0.01秒未来へ行ける。このように未来へ行くことはすでに現実のものとなっているので、タイムマシーンは存在していると言ったのだ。また、強い重力の元でも時間の流れはゆっくりになるので、中性子星かブラックホールの潮汐力に耐えうるロケットが開発されれば、近くに滞在するだけで未来行きのタイムマシーンになる。何れにせよ、現在に帰ってくることはできないので、一方通行のタイムマシーンではあるが。
過去に戻れないのであれば、絶版プラモで大儲けするのは叶わぬ夢ということですね。
いや、光速より速く移動するタキオン粒子なんかが発見されると、過去に情報だけは送ることができる。つまり小学生の私に、「マルサンの電動怪獣プラモを100万円分買い占め、厳重に保管せよ。将来、2億円くらいに化けるから」という連絡をすることは可能だ。通信が成功した瞬間、私の意識は変化し、昔受け取った情報通りにマルサンプラモを購入し、大金持ちになった満足感で満たされていることだろう。
昨年の9月に、名古屋大学らの研究チームが、光より速く進むニュートリノを確認したことが明らかになり、話題となりましたね。
個人的には実験の誤差か誤りだったと考えているが、我々が金持ちになるためには今後も目が離せない分野だぞ。
(参考文献)
・「SFはどこまで実現するか」(著者:ロバートL.フォワード、訳者:久志本克己、講談社ブルーバックス)
・「2063年、時空の旅」(著者:クリフォード・A・ピックオーバー、訳者:青木薫、講談社ブルーバックス)
※種々計算間違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください。
■タイムトラベルがテーマの映画
1)「ある日、どこかで」(1980年、製作:ラスター/スティーブン・ドウッシュ・プロ、配給:ユニバーサル・ピクチャーズ)
60~70年前に活躍した女優エリーズ(ジェーン・シーモア)に恋焦がれ、ついには時を超えて逢いに行く脚本家リチャードを「スーパーマン」(1978年)のクリストファー・リーヴが演じた。完全なる純愛ストーリーだが、劇中、タイムトラベル(時間旅行)というセリフが出てくるように、れっきとしたSF映画でもある。ぜひ、2回観ることをお勧めする。2回目では冒頭数分のシーンが、より心に染みるだろう。「007死ぬのは奴らだ」(1973年)でボンドガールを演じたジェーン・シーモアが、実に美しく描かれている。リーヴもスーパーマンと違った役柄を好演している。
2)「時をかける少女」(1983年、製作:角川春樹事務所、配給:東映洋画)
原作は筒井康隆のSF小説で、これまでアニメを含め何回も映像化されているが、個人的にはこれ1本で十分。2020年4月に亡くなった大林宣彦監督の作品で、タイムリープの能力を持ってしまった尾道の女子高生、和子(原田知世)の数日間を、しっとりと美しく描写した。これが銀幕デビューとなる原田を、大林監督が愛情を込めて丁寧に撮影し、同級生に対する和子のほのかな恋愛感情が印象的な青春ドラマに仕上げた。なお、大林監督は音楽担当の松任谷正隆に、「ある日、どこかで」の音楽を参考にするよう伝えたというエピソードがある。

3)「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年、製作:アンブリン・エンターテインメント、配給:ユニバーサルスタジオ)
言わずと知れた大ヒット映画シリーズの1作目。タイムトラベルもののツボは全て押さえられている娯楽作だが、個人的にはPart.1よりむしろPart.2の方が、
・ビフがスポーツ年鑑を過去の自分に手渡し、賭博で大儲けする。
・Part.1のクライマックスを主人公のマーティ(マイケル・J・フォックス)が見つめている。
・70年前の過去に飛ばされたドクがマーティに手紙を書き、電報会社の男が忠実に依頼を守ってマーティに手紙を渡す。
など、SF好きには考えさせられるシーンが多かったように思う。洋画に元気があった時代で、個人的にも思い入れがある作品だ。

4)「スタートレック4 故郷への長い道」(1986年、配給:パラマウント映画)
地球の危機を救うため21世紀に絶滅したザトウクジラが必要となり、20世紀の過去に戻るエンタープライズのクルーたち。映画館で観たが、正直、シリーズで一番つまらなかった。あえて紹介したのは、SF映画に偏った思想や安っぽい信条を持ち込むと作品がどれだけ色褪せるか、という良い例だからだ。幸いにして?捕鯨船のシーンは日本ではなく、ノルウェーっぽい国籍であったが、この映画を観て不愉快になった人間は多かったと思う。製作者たちはこうした感情が理解できないかもしれないが、ゴジラが実は広島の地底で被爆していて、西海岸に上陸後、たっぷり吸い込んだ放射能をアメリカにお返しするという映画を製作したら、怪獣映画として素直に楽しめるアメリカ人がどれだけいるか、ということだ。肝心のタイムワープも、太陽の周りを飛行するだけで簡単に達成するなどおよそSF映画らしくなく、レナード・ニモイがこれを最後に監督を降りたのは正解と思う。
愛すべきロボットたち 第11話「スモーキング・トイ」
今回は、煙を吐くロボットなどのToyを紹介します。煙を吐く仕組みですが、パラフィンオイルを染み込ませた綿をニクロム線で熱し、ふいごで口から吐き出させるというのが一般的です。残念ですが、パラフィンがなくなると煙を吐かなくなります。私はブルマァクの「リモート R/C 古代怪獣ゴジラ」をクリスマスプレゼントで両親に買ってもらいましたが、すぐに煙を吐かなくなり悲しい思いをした経験があります。現在、保有のゴジラはオークションで入手した中古品で、製造後50年は経過している代物のため、煙の量は相当減少しています。また、復刻ロボット「SMOKING SPACEMAN」(株式会社マイクインターナショナル)は新品を購入しましたが、購入後14年も経過すると煙がほとんど出なくなりました。一方、マルサンの「SMOKING PAPA BEAR」は製造後60年程度経過している可能性がありますが、動画の通り、今でも元気に煙を吐き出します。「完動品」と謳っていても、個体ごとの差に加え、どれだけ遊ばれたかによっても吐き出す煙の量は変わってくると思いますので、高価なレア品をご購入の際は注意して下さい。

1)リモート R/C 古代怪獣ゴジラ(ブルマァク)
元々マルサンが製造・販売していましたが、ブルマァクになってからも販売が継続される人気商品でした。ブルマァクの当時のチラシを見ますと、シリーズの価格は「ゴジラ」と「バラゴン」が1,420円、「ジラース」が1,530円、「ガイガン」が1,540円、プラトイの「アーストロン」が1,310円、同じく「ゴモラ」が1,420円となっています。以前、大卒初任給を使い大阪万博の入場料が現在の貨幣価値でいくらになるか推定したことがありましたが、同じ手法によると「ゴジラ」は7,580円となります。決して裕福な家庭ではありませんでしたが、そのような高額なおもちゃを買ってくれた両親に改めて感謝します。なお、別のチラシでは、「ゴジラ」が63%アップの2,310円まで値上がりしていますが、これはオイルショックの影響かと思います。
「ゴジラ」はブリキの持つ重厚感と頑丈さに加え、鳴き声をあげながら両手を振って前進し、口を開閉・点灯させながら煙を吐くという、まさにスーパートイでした。そのため現在の中古市場でも大人気で、5~10万円程度で活発に取引されています。中でも「ガイガン」は滅多に市場に出てこないため、「Aucfree」による過去5年間の落札価格は28万円~90万円とすごいことになっています。私の「ゴジラ」はリモコンがオリジナルではなく、口の開閉にも難がありますが、煙は少量ながら吐くため、50,000円以下で入手できたことに満足しています。


2)SMOKING SPACEMAN(株式会社マイクインターナショナル)
元々は、1950年代にヨネザワが製造、販売していた大型ロボットです。保有のものは、マイクインターナショナルの復刻版で、オリジナルカラーであるオレンジの商品です。現在の販売価格は2万円前後かと思いますが、当時はもっと安く入手できました。TIN TOM TOYやHAHA TOYSなどというブランドでも復刻されていたようですが、詳細は不明です。何れも中国製です。頭のランプを回転・点灯させながら両手を振って前進し、停止後、目玉を点滅させながら3回、煙を吐き出します。素晴らしいギミックです。


3)SMOKING PAPA BEAR(マルサン)
詳細は分かりませんが、1950~1960年代にマルサンが製造、販売した商品です。クマのお父さんが歩きながらパイプをくわえるとパイプの先端が赤く光り、その後口から煙を吐き出すというものです。一連の動作を見ても、海外向けに製造された商品であることが分かります。手足はブリキ製ですが、顔はぬいぐるみで、本体はきちんと布製の服を着ています。手持ちのものはオークションで安く入手しましたが、本当に完動品だったので驚きました。

祝!帰ってきたウルトラマン放送50周年 勝手に記念 ソフビ電動化計画
(No.19 プラスチック怪獣ゴキネズラ)

長らくの連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。製作した最後の怪獣、ゴキネズラを紹介します。この怪獣は、隊長が途中で交代するという、当時は衝撃だった第22話「この怪獣は俺が殺る」に登場します。この回は、市川森一脚本、山際永三監督だけあって、見どころ満載の一方、怪獣は変なヘアスタイル?をしており、ちょっとドラマの内容にそぐわない印象です。しかし、ブルマァク製のソフビは小振りながら大変可愛らしい仕上がりになっており、電動化の対象としました。
この「ゴキネズラ」は、本プロジェクトで多く用いたタミヤのドライブベルトとプーリーによるタイヤ走行(緑商会式)を基本としていますが、走行側プーリーにタイヤを偏心させて取り付け、両足を動かしながら進むよう工夫しています。
仕事や家庭上の問題で忙しくなり、2015年に完成したこの「ゴキネズラ」以降、ソフビの電動化には着手できていませんが、候補となるソフビはまだ数点、保有しています。次回は、そうした電動化未着手のソフビと、電動化の構想を紹介したいと思います。

右:足裏:プーリー(黒い部分がドライブベルト)とプラ製タイヤ足(銀色)
