2022年夏特別号
東風力研究所だより
空飛ぶ移動基地ジャンポール・フェニックスにある東風力(こうちりょく)研究所では、所長の東風太郎(こちたろう)教授 と、准教授に昇格した東風ジロー(こちじろー)
が日々、東風力の平和利用を目的に研究を行っている。今日も二人は、ジェンガをしながら熱い議論を交わすのだった。
🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶🔶
久しぶりの投稿です。この1年間を振り返ってみましょう。
うむ。個人的には、数回の入院・手術があったが、何とか元気にやっておる。しかし、仕事中心の生活に戻ったので、プラモデルやソフビなどのコレクションは手つかずのままだ。格納庫のコレクションが暑さで溶けてしまわないか心配だ。
世界各地に異常気象が続いてますもんね~
東京湾に本当にザザーンとタッコングが現れるかもしれんぞ。
そんなアホな。

■シン・ウルトラマン
特撮関係でこの1年、特筆すべきことと言えば・・・
「ウルトラマンデッカー」の放送開始ですね!
セルジェンド光線。
ぎゃあ。
そんなボケは要らん。映画「シン・ウルトラマン」公開(2022/5/13)に決まっているだろう。

それで鑑賞したご感想は?
庵野秀明氏が企画・脚本した「ウルトラマン」の映画なので、ウルトラファンでない一般の方の期待も大きかったと思う。しかし、結局、どういうお客さんをターゲットとして考え製作した映画なのか、最後まではっきりせず、中途半端な印象しか受けなかったな。
私は面白く観ましたが・・・
ウルトラファンの立場から考えると、なぜ「初代ウルトラマン」の焼き直しの映画を創ったのか、分からん人も多かったと思う。これは、監督である樋口真嗣氏が、以下の様な発言をしていたことを知っていたので、不思議ではなかったが・・・
ーもしも、ご自身の手でリメイク、監督するとしたら、ウルトラシリーズのどんなエピソードを手がけてみたいですか?また、その理由を教えてください。
樋口:初代。全部。パワードで失敗しているので今度こそ。リベンジです。
「ウルトラマンWalker」(カドカワムックNo.471)
「樋口真嗣特撮を語る」より
それより、庵野氏がチョイスしたというエピソードの方がしっくりこないよな。特に、「ザラブ星人」の話は、確かに面白いストーリーではあるが、初代マンを代表する程のものでもないだろう。怪獣・宇宙人でも、バルタン星人、レッドキング、ゴモラといったスター級は出てこなかったし・・・つまり、「シン・ウルトラマン」とは、庵野・樋口コンビが創りたかったものを映画化しただけの作品であって、はなから万人受けを狙ったものではないということだ。
でも、山本耕史が演じるメフィラス星人の評判は良かったですよ。
彼の謎めいたところが、天才的な宇宙人役に嵌ったのは確かだ。しかし、メフィラスのエピソードを持ち出したのは、単に長澤まさみを巨大化させたかったという、製作サイドの悪趣味の匂いがする。だってフジ・アキコ隊員と異なりスカート姿のまま巨大化させ、ビルにキックまでさせてるんだぞ。女性の胸や脚など、身体の特定の部分に固執する連中へのサービスなんか、「ウルトラマン」には全くもって不要であると言っておく。
ゾフィーが地球を破壊しようとしたことにも驚きました。
金城哲夫氏がもし生きていたら、許さなかっただろうな。「光の国」からの使者は、地球を救う絶対的なヒーローであって、その存在は神々しいもの。このスタンスは、氏が創造した「ウルトラマン」の世界では一切、ぶれていない。人間みたいに理屈を言って地球をどうこうしようと画策するウルトラマンやゾフィーって、私は嫌だ。ほかにも、怪獣を「禍威獣」、科特隊を「禍特対」って言いかえるなど、おかしなアレンジを試みているが、これも初代へのリスペクトに欠ける行為だと思う。
肝心の特撮の出来はどうでしたか?
前から言ってるように、フルCGは特撮ではない。また、CGも度が過ぎると、生物感の全くないガボラみたいな描き方になってしまう。メフィラスとウルトラマンの戦闘シーンも、初代の方がはるかに緊迫感があったことを指摘しておきたい。
結局、1年経っても教授のレトロ指向は変わっていない、ということですね。
いや、エンディングに流れる米津玄師の歌だけは高く評価しているぞ。
■円谷プロ関係の話
TVのウルトラシリーズに話を戻しますと・・・
「ウルトラマントリガー」は、当初の心配をはるかに凌駕する「低い」クオリティでフィニッシュしたな。ウルトラの「黒歴史」誕生と言ってるファンがいるが、私も同感だ。何せ、30分間視聴していて頭が痛くなったシリーズは初めてだったからな。
私も正直、つまらなかったと思います・・・
登場するキャラクターの掘り下げが圧倒的に薄い印象だった。筋トレする隊員とか、戦闘機を操縦すると人が変わる女性隊員とかは、彼らを主人公にしたエピソードが本来なら1話ずつ必要だったはず。それを巨人が女性隊員に恋するといったつまらんエピソードや、「ウルトラギャラクシーファイト」の番宣を兼ねた話などをねじ込んだりするから、回数が足りなくなったのだろう。もう、このスタッフでのシリーズ製作は、ご遠慮願いたい気分だ。
やっぱり、長野博君演じるマドカ・ダイゴは登場しなかったですね。
最近乱用している「別宇宙の話」ということで逃げたからなあ。というか、宅麻伸がなんで唐突にウルトラマンティガに変身するんじゃ!最終回で、ティガをまねて「ウルトラマン・トリガー!」と子供たちが叫ぶオープニングをやったりしたが、こんな程度でティガの世界を継承していますよと言われても、観ていて気分が悪くなるだけだ。

後番組の「ウルトラマンデッカー」はどうですか?
主人公のキャラ設定が相変わらず薄っぺらい点は気になるが、今のところ、「トリガー」よりはましかな・・・それより、ナースの首が乗ってるあの忌まわしいナースデッセイ号をやっと観ずに済むと思ってたら、また登場してるやないか!もう、センスのない玩具メーカーとのタイアップから、いい加減、脱したらどうだ。
話は変わりますが、先日、NHKで放送(総合 2022/4/28、BSプレミアム 2022/5/2)された「ふたりのウルトラマン」を観て、思わず泣いてしまいました。
ウルトラマンを創った面々、金城哲夫(満島真之介)、円谷一(青木崇高)、上原正三(佐久本 宝、平田満)らの青春を描いた作品だったが、当時の円谷プロの熱気をうまく伝えていたと思う。役者は皆、全然似ていないが、時間が経つにつれて本人としか思えなくなってくる。特に満島真之介(「ウルトラマンマックス」でエリーを演じた満島ひかりの弟)の熱演は見事だった。沖縄の本土復帰50年を記念し製作された連続テレビ小説「ちむどんどん」(放送中)がお粗末な出来なのに対し、きちんとウチナンチュー(沖縄人)の苦悩も描かれていたしな。これを観て、現在の円谷プロスタッフには、本当に先人たちに恥じぬ仕事をしているか、自己を省みてもらいたい。


この変てこな怪獣映画は何ですか?
「怪獣大奮戦ダイゴロウ対ゴリアス」を知らんのか?1972/12の東宝チャンピオンまつりで、「ゴジラ電撃大作戦」(「怪獣総進撃」のリバイバル)、「パンダコパンダ」(宮崎駿・高畑勲コンビによる伝説のアニメ)と併映された円谷プロ創立十周年記念作品だ。当時、小学館の学習雑誌に連載されていた「怪獣ダイゴロウ」は、ほのぼのとしたナンセンスマンガだったが、映画公開に合わせ突然、ゴリアスが登場してきて驚いた。なお、「小学三年生」の付録に、組み立て式のゴム動力「歩く怪獣ダイゴロウ」(クランクでちゃんと二足歩行する!)があったことを覚えている。
「笑点」の司会をされていた「てんぷくトリオ」の三波伸介さんが出演されてますね。懐かしい。
普通の怪獣映画と違って、実風景に怪獣だけを合成するなど新しい試みがなされており、特撮の仕上がりも丁寧だ。円谷プロの底力を示した作品だと思うぞ。
何でまた、そんな古い映画を取り上げたんですか?
実は小学三年生の時からずっと観たかったのだが、この盆休みに観ようと思ってとうとうDVDを買ったのだ。話自体は他愛のないものだが、飯島敏弘監督らしく楽しい作品に仕上がっており、山村哲夫氏演じるダイゴロウも可愛く、着ぐるみもよい出来だ。
■教授、神について語る
安倍晋三元総理が狙撃され死亡するという衝撃の事件がありました(2022/7/8)。
この事件をきっかけに、特定の宗教団体と政治家との「不適切な」関りが取り沙汰されているな。
全てのお金を差し出しなさい、という神って、信者へのいわゆる「カツアゲ」じゃないですか?
宗教への帰依は個人の自由だが、敬愛するカール・セーガン博士が著書の中で述べているとおりなんだろう。
「宗教がこれほどまでに恥知らずで不誠実で、信者の知能程度を見くびっていながら、依然として信者を集めている事実は、信者たちの知力があまり強靭でないことを物語っている。」
「サイエンス・アドベンチャー」(カール・セーガン、中村保男訳、新潮選書)「23 日曜礼拝の説教」より 教授は無神論者ですよね。
神の存在など、科学では証明できない事に対する興味がないだけだ。先の書籍の中で、セーガン博士は、「神は遠い別の時空に存在するかもしれないし、宇宙の究極原因であるのかもしれない」と述べつつも、近死体験(=臨死体験)で出会う神の様な存在には人類共通の原体験があり、それは出生時に初めて出会う人間、すなわち産婆、産科医、父親などの存在である可能性に触れている。これは大変興味深い指摘だと思う。
ロボットに神は必要ないし、考えたこともありません。
お前の様な低レベルの制御系はともかく、究極までに発展したAIなら信仰心を持つようになるかもしれない。高度な知性は、自身の存在そのものに、少なからず不安を抱くものだから。
神って結局、何なんでしょうか?
「スタートレック」第33話「神との戦い」(アメリカ放映第31話「Who Mourns For Adonais?」)では、ギリシャの神々は古代に地球を訪れた超生命体であるとしていた。この手の話はさほど珍しいものではない。しかし劇中、カーク船長がその神たるアポロに向かって、「我々にはもはや神など必要ないんだ」と言い切るシーンには驚いた。半世紀も前に、科学の進歩によって何れ人類は宗教の呪縛から逃れるようになると製作者のジーン・ロッデンベリーは考えていたんだろう。しかし、これだけ科学が進歩しても、宗教を原因とする不幸な出来事が後を絶たないことを考えると、人類はジーンの想像より進歩していないんだろうな。
(左)惑星ポルックス4号でカークらは神と名乗る存在に出会う。
(中)「神など必要ない」と叫ぶカーク。
(右)エネルギーの源を破壊され涙するアポロ。その後、アポロは風となって消えていく。
さて最後に、セーガン博士が宗教への正しい向き合い方について語っているので、このコーナーの締め括りとして紹介したい。
「宗教は心の慰めであり、支えであり、感情が何かを必死に求めている際のよりどころともなり、社会的にもきわめて有用な役割を果たしうるということには疑問の余地がない。しかし、だからと言って、宗教が検証を受けたり、批判的な吟味や懐疑の対象となったりすることがあってはならないという法はないのだ。」
「サイエンス・アドベンチャー」(カール・セーガン、中村保男訳、新潮選書)「23 日曜礼拝の説教」より
お知らせ
1年ぶりの「東風主義」、如何でしたか?さて、2021年2月から9月にかけて30回にわたり公開した「東風主義」が一冊の本になりました。A5サイズのフルカラーで、日本語版(430頁、\5,500円)、英語版(481頁、\6,500円)の2種類があります。特典として動画等を収めたDVDが付いています。DVDには未公開の映像も収録しています。若干数、在庫がありますので、ご希望の方は「お問い合わせ」よりご連絡ください。